Ken Craftのリニージクワイアット(Lineage Quiet)は、かつてのバス釣りブームを象徴するような名作ルアーのひとつだ。
独特すぎるデザイン、妙に凝った造形、そして今では考えられないほど贅沢な作り込み。
「あの時代だからこそ生まれた」と言えるルアーであり、今なお中古市場やオールドルアー好きの間で語られ続けている。
その中でも特に面白いのが、カラーによってボディデザインそのものが違うという点だ。
あるカラーには鱗の彫刻があり、別のカラーにはそれが無い。
つまり、ただの塗装違いではなく、金型そのものが違う。
現代ならコスト面からまずありえない仕様だが、当時のバス釣りブームでは、こうした無駄に本気な作り込みが普通に存在していた。
今回は、ケンクラフトの名作ルアー「リニージクワイアット」がなぜ今なお評価され続けているのか、その秘密を掘り下げていく。
ケンクラフトとは
ケンクラフト(Ken Craft)は、かつてのバス釣りブームを語るうえで外せないルアーブランドのひとつだ。
90年代から2000年前後にかけて、多くのアングラーが熱狂したあの時代。
各メーカーが次々と個性的なルアーを投入し、“釣れる”だけではなく“持っていたくなる”ルアーが数多く生まれた。
そんな中でもケンクラフトは、独特すぎるデザインと細部まで作り込まれた造形で強い存在感を放っていた。
今見ると「なぜそこまでやるのか」と思うような仕様も多い。
しかし、それこそが当時のバス釣り業界の熱量だった。
私自身、バス釣りにどっぷりハマるきっかけになったのが『千夜釣行』というTV番組だった。
ケンがバスをヒットさせるたびに、ナレーションが決まってこう叫ぶ。
「KEN FISH ON!!」
あの一言を聞くだけで、なぜかこちらまでテンションが上がった。
あの時代を知っている人なら、このフレーズだけで少し懐かしくなるはずだ。
売れるから作るのではなく、面白いから作る。
そんな空気の中で生まれたルアーたちは、今でもオールドルアーとして高い人気を持っている。
今回紹介するリニージクワイアットも、まさにその象徴のひとつ。
ただのペンシルべイトでは終わらない、“異常なこだわり”を持った名作ルアーだ。
ちなみに、“ケン”とは当時の上州屋の社長の息子だと聞いたことがある。
アメリカで学んだバスフィッシングのテクニックや知識を持ち帰り、それを詰め込んだブランドがケンクラフトだった。
だからこそ、当時の国産ルアーの中でもどこか異質で、妙にアメリカンな空気をまとっていたのかもしれない。
リニージクワイアットにも、そんな時代の熱と遊び心がしっかり残っている。
リニージクワイアットとは
リニージクワイアットは、ケンクラフトが生み出したペンシルベイトの名作のひとつだ。
当時、トップウォーターで大型のペンシルベイトといえば、入手困難だったMegabassのジャイアントドッグXを思い浮かべる人も多かった。
あまりにも人気が高く、店頭ではなかなか手に入らない存在だったことから、「リニージクワイアットはジャイアントドッグXに対抗して作られたのではないか」と言われることもあった。
真相は定かではないが、サイズ感や存在感、そして“ただのペンシルでは終わらない妙な作り込み”を見ると、そうした噂が出るのも納得できる。
一見すると普通のトップウォータープラグに見えるかもしれない。
しかし、このルアーの面白さはそこではない。
カラーによって、鱗の彫刻が入っていたり、入っていなかったりするのだ。
つまり、ただの塗装違いではなく、ボディの金型そのものが違う。
現代の量産ルアーではまず考えられない仕様だが、当時はこうした“無駄に本気”な作り込みが普通に存在していた。
だからこそ、今でも語られる。
リニージクワイアットは、ただのオールドルアーではない。
あの時代のバス釣り文化そのものを閉じ込めたような一本なのだ。
なぜリニージクワイアットは今でも語られるのか
リニージクワイアットが今でも語られる理由は、単純に「古いルアーだから」ではない。
今のルアーにはない、明らかに異常なこだわりが詰め込まれているからだ。
その代表が、カラーによってボディの金型そのものが違うという点。
普通なら塗装だけを変えて展開するところを、リニージクワイアットは鱗の彫刻の有無まで変えていた。
つまり、同じルアーでありながら、カラーごとに別物と言ってもいいレベルの作り込みがされていたのである。
現代なら、まずコストが合わない。
大量生産が前提の今では、こうした仕様はほぼ不可能だ。
しかし、当時のバス釣りブームにはそれを成立させる熱量があった。
さらに大きかったのが、上州屋という巨大な釣具チェーンの存在だ。
強力な販売網という後ろ盾があったからこそ、こうした尖ったルアーも全国に広がり、多くのアングラーの手に渡った。
普通の小さなメーカーなら、ここまで攻めたルアーを作っても埋もれて終わっていたかもしれない。
「売れるから作る」ではなく
「面白いから作る」
そんな挑戦が成立した背景には、上州屋グループならではの強さも確かにあった。
さらに、リニージクワイアットは単なるコレクション用ではなく、今でも普通に釣れる。
トップで出ない日でも、静かに誘い、しっかり食わせる力がある。
だからこそ、“懐かしいだけのルアー”では終わらない。
今でも探し続ける人がいる。
それが、リニージクワイアットが語られ続ける理由だ。
リニージクワイアットの使い方
リニージクワイアットは、ただ巻きで使うルアーではない。
ペンシルベイトらしく、首を振らせながら使ってこそ本領を発揮する。
基本は、ロッドティップを軽く下げながら細かくトゥイッチを入れ、左右に首を振らせる“ドッグウォーク”。
強く動かしすぎる必要はない。
むしろ、このルアーは派手に暴れさせるよりも、静かに、じわじわと見せて食わせるほうが強い。
特に効くのが、朝夕のフィーディングタイムや、風の弱いシャローエリア。
プレッシャーの高い野池や、何度も叩かれたメジャーフィールドでは、この控えめなアクションが驚くほど効くことがある。
時々ポーズを入れるのも重要だ。
追ってきた魚に「食う間」を与えることで、バイトにつながりやすくなる。
派手なトップウォーターに反応しない日ほど、こういう静かなペンシルが生きてくる。
まさに“Quiet”という名前の通り、騒がず、静かに釣る。
それがリニージクワイアットの使い方だ。
リニージクワイアットで狙える魚種
リニージクワイアットはバス用ルアーとして知られているが、実はかなり幅広い魚種を狙うことができる。
私自身、このルアーで実際に釣ったことがあるのはブラックバス、シーバス、そしてチヌ(クロダイ)だ。
特にトップに強く反応する魚には相性が良く、静かに誘えるこのルアーは意外なほど出番が多い。
ブラックバスではもちろん本来の使い方そのもの。
野池やリザーバー、河川のシャローなど、プレッシャーが高い状況ほどこの“静かさ”が効いてくる。
シーバスでは河川の明暗部や運河など、水面を意識しているタイミングでかなり面白い。
派手なポッパーよりも、こうした静かなペンシルのほうがハマる日がある。
チヌ(クロダイ)やキビレも、夏場のトップゲームでは相性が抜群だ。
水面を割って出る瞬間は、何度味わっても気持ちがいい。
さらに、条件次第ではナマズや雷魚、大型のメッキなども十分狙える。
特にナマズは意外なほど相性が良く、静かめのペンシルにしっかり反応してくる。
メッキに関しては小型個体にはやや大きすぎるが、大型個体ならしっかり水面を割ってくる。
つまり、リニージクワイアットは「バス専用ルアー」ではない。
水面を意識しているフィッシュイーター全般に使える、今でも十分現役の万能トップウォータープラグなのだ。
中古で探すときの注意点
リニージクワイアットはすでに新品で手に入るルアーではないため、基本的には中古市場で探すことになる。
オークションやフリマアプリ、タックルベリーのような中古釣具店で見かけることもあるが、購入前にはいくつか注意したいポイントがある。
まず確認したいのが、ボディの割れや浸水の有無。
オールドルアーは見た目が綺麗でも、内部に水が入っていたり、接着部分が弱っていたりすることがある。
特にトップウォータープラグは浮力が命なので、ここはかなり重要だ。
ひび割れの見分け方は『よく見ろ!』としか言えない。
リニージクワイアットはリアヒートンの位置が少し特殊でボディーの一番後ろについていない。
通常ストラクチャーにぶつけたらリアヒートンが潰れてしまうのだが、リニージクワイアットに関してはボディのケツの部分の塗装が剥がれていたり、ひび割れてることがあるのでこの辺りを念入りに見てほしい。
次にフックやスプリットリングの状態。
長年保管されていた個体はサビが出ていることも多く、そのまま実戦投入するには不安が残る。
フックは消耗品と割り切って、交換前提で考えたほうがいい。
そして、リニージクワイアットならではのポイントが、鱗の彫刻の有無。
カラーによって金型が違うため、同じルアーに見えて実は仕様が異なることがある。
コレクションとして探すなら、この違いはかなり重要だ。
「ただ安いから」で飛びつくよりも、自分が欲しい個体をしっかり見極める。
それがオールドルアーを楽しむコツでもある。
もし中古屋で見つけたら、一度手に取ってみてほしい。
よく飛び、よく泳ぐ。
そして、ちゃんと釣れる。
ただ懐かしいだけのオールドルアーではない。
SNSに魚付きで写真を上げれば、昔を懐かしむアングラーがきっと反応してくれるはずだ。
「あ、それまだ使ってるのか」
そんな一言が返ってくるだけで、ちょっと嬉しくなる。
リニージクワイアットには、そんな時代をつなぐ力がある。


